暑さも少し落ち着いてくると、食欲の秋の到来です。おいしい秋! ついつい食べ過ぎてしまうと、体重増加の心配が…。今回は、おいしい秋の味覚を堪能しながら、健康に過ごすためのポイントをお伝えします。
秋に食欲が増す理由
○夏の疲れが回復
夏の暑さで体が弱って蓄積していた疲労が、涼しくなるにつれ少しずつ回復してきます。同時に、消化器官も正常に戻ってくるため、食欲が増進するのです。
○気温が下がるとエネルギー消費量が増加
私たちの体は、常に体温を36度前後に保っています。夏場は外気温が体温とあまり差がないため、少ないエネルギー消費量で体温を保つことができますが、秋から冬にかけて外気温が下がって体温との差が出てくると、体温を36度前後に保つためにエネルギーを消費します。つまり、秋は夏よりもエネルギーを多く消費するため、その分、食べる量が増えるというわけです。
○日照時間が短くなり、セロトニンの分泌が減少
秋になり日照時間が短くなると、日光にあたる時間も短くなって、セロトニンの分泌が低下します。セロトニンは、脳や腸で分泌される神経伝達物質で、「幸せホルモン」ともいわれます。主な働きとして、「精神を安定させる」「食欲を抑える」という2つがあげられます。分泌が減ると食欲が増し、うつ病などの要因となります。
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○おいしいものが多い
「実りの秋」にふさわしく、旬のおいしい味覚が盛りだくさん。自然と食べ過ぎてしまいがちになりますね。
食べ過ぎを防ぎ、健康に過ごすために
①規則正しい生活を送る
1日3食食べて、規則正しい生活を送ることが大切です。欠食や食事の間隔が開き過ぎると、食べる量が増えたり血糖値が急激に上昇したりで、中性脂肪の増加にもつながります。1日3食食べることは、活動に必要なエネルギーや栄養素を補うだけでなく、規則正しい生活リズムを整えることにもなるのです。
②食べる順番を意識する
噛む回数が多い食材をよく噛むことで満腹中枢が刺激され、食べる量を抑えることができます。ですから、野菜や海藻、きのこ類を、まず初めに食べるようにします。特に、秋の味覚の一つである「きのこ」には食物繊維が多いので、血糖値の急激な上昇を抑え、体の負担を軽減してくれます。
噛む回数を増やす調理の工夫も取り入れてみてください。食材を大きく切ったり固めに煮炊きしたりすることで、自然と噛む回数が増えます。
食べる順番は、副菜(野菜や海藻、きのこ類)→主菜(肉や魚、大豆製品、卵類)→主食(ご飯や麺類)。これを意識するだけでも、おいしい秋の味覚を食べ過ぎにならないように味わうことができます。
③適度な運動を心がける
運動は食べたものを消費してくれるので、健康な体づくりには必要不可欠です。暑い夏と違って戸外での運動が気持ちのいい季節です。日光を浴びながらの運動は、セロトニンの分泌を促してくれます。「スポーツの秋」でもあります。適度な運動を楽しみながら、そして食欲も満たしながら、健康づくりを心がけましょう。
④しっかり睡眠をとる
睡眠不足は、食欲増進につながるため、肥満になりやすくなります。というのは、睡眠時間が短くなると食欲を抑えるホルモンであるレプチンの分泌が減少し、食欲を増進させるホルモンであるグレリンの分泌が増えてしまうからです。
しっかり睡眠をとることによって、セロトニンの分泌も促されます。夜は早めに寝て睡眠時間を確保し、朝早く起きて太陽の光を浴びるようにしてください。
こんなことを少し意識するだけでも、食欲をコントロールできます。食欲の秋を我慢するのではなく、旬のおいしい味覚を堪能しながら健康に過ごしていただけたらと思います。
ライター:山下 真澄
管理栄養士|日本スポーツ協会公認スポーツ栄養士|
食育インストラクター|一級惣菜管理士|調理師