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食中毒に気をつけましょう
2024.07.16 レシピ

食中毒に気をつけましょう

食中毒は年間を通して発生していますが、高温多湿な時期には特に細菌が増えやすいため増加する傾向にあります。日ごろから、食中毒にかかりにくい体づくりを心がけ、細菌を増殖させないことが肝要です。

食中毒とは

食中毒とは、細菌やウイルス、有害な物質などがついた食べ物が原因で起こり、下痢や腹痛、嘔吐、吐き気などさまざまな症状を呈する疾患です。ひどい場合には死亡にいたることもあります。食中毒の原因により、症状や症状が発症するまでの時間は異なります。

食中毒の原因

食中毒を引き起こす原因は、「細菌」「ウイルス」「自然毒」「化学物質」「寄生虫」の5つに大きく分けられます。 「細菌」は、サルモネラ菌や黄色ブドウ球菌、腸管出血性大腸菌O-157などさまざまです。温度や湿度などの条件が揃うと、食べ物の中で増えて食中毒を引き起こします。細菌の多くは気温が高いこと、湿気が多いことを好むため、夏場に多く発生します。 「ウイルス」の代表はノロウイルスで、牡蠣などの二枚貝に潜んでいることが多いのですが、あらゆる食品が原因となります。食べ物を介して体内に入り、人の腸管内で増殖をして食中毒を引き起こします。ウイルスは低温や乾燥した環境下で長く生存するため、冬に多く発生します。 「自然毒」は有毒植物(毒きのこや野草など)やふぐ毒などであり、「化学物質」は青魚を食べることによって起こるヒスタミン中毒や農薬など、「寄生虫」は魚介類に寄生するアニサキスやクドアなどです。 

食中毒の主な特徴 

食中毒を引き起こす細菌やウイルスは多く存在します。主な食中毒の特徴や症状を下記にまとめました。 

原因菌 原因となる食品症状予防方法
サルモネラ菌 十分に加熱していない卵や肉、魚など。例えば、生卵、オムレツ、自家製マヨネーズ、洋生菓子、牛肉のたたきなど。 食後6〜48時間で嘔吐、腹痛、下痢、発熱などを起こす。 生鮮食品は新鮮なものを購入し、冷蔵庫に保存し、早めに食べる。 
十分な加熱。食品中心温度75℃以上1分間以上加熱。 
カンピロバクター 十分に加熱されていない肉(特に鶏肉)、飲料水(井戸水や湧き水)、生野菜。 食後1〜7日で、発熱嘔吐、下痢、腹痛、筋肉痛などを起こす。下痢に血が混じることがある。 十分な加熱。 
生肉を触ったら、手をよく洗う。殺菌されていない井戸水や湧き水は飲まない。 
黄色ブドウ球菌 人の皮膚や鼻、口の中、傷口、髪の毛などにいるため、加熱後に手作業を行う食品が原因。おにぎり、いなり寿司、巻き寿司、弁当、調理パンなど。 食後1〜6時間で、吐き気、嘔吐、腹痛などを起こす。下痢を起こすこともあるが、発熱はない。 手指の洗浄、消毒。手指に怪我がある場合は調理をしない。菌は熱に弱いが、菌がつくる毒素は熱に強いため、一度毒素が出てきてしまうと加熱では防げない。 
腸炎ビブリオ 生の魚や魚介類。食後4〜96時間で、激しい下痢、腹痛などを起こす。高齢者は症状が重くなるので注意。 魚介類は流水でしっかり洗う。加熱。生の魚介類を触ったら手をよく洗う。 
腸管出血性大腸菌 
(O-157、 
O-111) 
十分に加熱をしていない肉。殺菌されていない井戸水や湧き水。生野菜。あらゆる食品。食後3〜8日で激しい腹痛、下痢、下血などを起こす。子どもや高齢者は貧血や腎機能の低下、痙攣などの症状が出ることがあり、重症化すると死に至ることもある。 十分な加熱。食品中心温度75℃以上1分間以上加熱。生野菜はよく洗ってから食べる。生肉を触ったら、手をよく洗う。 
ボツリヌス菌いずしや瓶詰など長期保存の可能性の多い自家製食品。はちみつ(1歳未満)。膨張している真空パック、缶詰。 食後8〜36時間で嘔吐、下痢、うまく話せない、ものを飲み込みづらいなどの症状が出る。呼吸ができなくなり死に至ることもある。 作り置き料理を食べるときは十分加熱。120℃で4分、100 
℃で360分以上の加熱をしないと菌が死なないため、自宅でいずしや瓶詰を作るときは注意。食材をよく洗う。
ウェルシュ菌 煮込み料理(肉や魚、野菜など。煮物やシチュー、カレーなど)。 食後6〜18時間で腹痛、下痢などを起こす。調理後10℃以下の保存。前日調理は避ける。
ノロウイルスウイルスを含む二枚貝を生や十分に加熱をせず食べた場合。 
感染している人の手を通じてウイルスが付いた食品。 
食後1〜2日で嘔吐、激しい下痢、腹痛を起こす。 食品中心温度85〜90 
℃で90秒間以上加熱。牡蠣などの二枚貝は体調が悪いときは生で食べるのを控える。手指の洗浄、消毒。 

食中毒を予防するには…… 

予防の基本は、原因菌を「つけない」「増やさない」「やっつける」です! 食中毒は、原因となる細菌やウイルスが食べ物につくことで体に入り、発生します。 予防するためには、まずは、原因菌をつけないこと! そのためには、調理前や食事前、何かをした後など、その都度きれいに手を洗うことで、食材に菌がつくことを防ぎます。加熱しないで食べるものは先に扱ったり、保存の際には密閉容器に入れたりラップをするなど、菌をつけないようにすることが重要です。 

 次に、原因菌を増やさないこと。細菌は高温多湿の環境下でどんどん増えます。10℃以下では増殖がゆっくりとなり、-15℃以下では増殖が止まります。したがって買ってきた生鮮食品などは、すぐに冷蔵庫に入れて低温保存を。ただし、冷蔵庫に入れても菌が死滅するわけではないので、早めに食べきることも大事です。そのためにも食品は必要な量だけ購入することを心がけます。また、冷気が庫内にゆきわたるよう冷蔵庫はきれいに整理整頓し、詰め込みすぎないこと。 

3つ目は、原因菌をやっつけることです。ほとんどの菌は加熱によって死滅します。肉や魚の調理の際は、しっかり加熱し、中心部まで火が通っているか確認してください。加熱の目安は、食品中心温度75℃で1分以上です。調理器具も洗剤でよく洗った後、熱湯をかけて殺菌するといいでしょう。 

食中毒は、重症化すると死に至ることもあります。食中毒菌が活発になる高温多湿の環境下では、調理や食品保存、食べるときなどの衛生面にくれぐれも気をつけてください。また、しっかりと睡眠をとり、栄養面や運動にも配慮して食中毒にかかりにくい体づくりを心がけましょう。 

【参考文献】 

・農林水産省「食中毒をおこす細菌・ウイルス・寄生虫図鑑」 

https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/foodpoisoning/f_encyclopedia/

・政府広報オンライン「食中毒予防の原則と6つのポイント」 

https://www.gov-online.go.jp/featured/201106_02/#secondSection

ライター:山下 真澄

管理栄養士|日本スポーツ協会公認スポーツ栄養士|
食育インストラクター|一級惣菜管理士|調理師