日ごろから痛風予防のため「プリン体をとらないようにしている」などと気をつけながら生活している方も多いのでは? そもそもプリン体とはどのようなものかご存じですか? 今回はプリン体についてお話しします。
プリン体とは
プリン体とは、細胞の核にある核酸を構成する主成分のこと。アデニンやグアニンなどとして存在しています。悪者扱いされがちですが、生命維持に必要であり、細胞の代謝や増殖などを助ける重要な役割があります。あらゆる生物の細胞内に存在し、ほとんどの食品にうまみ成分として含まれています。プリン体は食べ物から摂取される以外に、細胞の新陳代謝やエネルギー代謝によって生成されます。
尿酸値が高くなる理由
プリン体は、最終的には尿酸という老廃物として体外に排泄されますが、多すぎると血液の中に溜まってしまい、高尿酸血症を起こします。高尿酸血症(尿酸値7.0mg/d L以上)の状態が続くと、尿酸が結晶化した尿酸塩が関節に沈着し、急性関節炎を起こします。これが「痛風」です。ほかに腎臓や尿路に沈着することもあり、腎障害や尿酸結石を起こすこともあります。健康診断の結果をチェックして、尿酸値が高い方は要注意です。
プリン体だけ気をつければいい?
尿酸値が高いからといってプリン体だけに気をつけていればいいわけではありません。尿酸値が高くなる原因には遺伝的な要因も考えられますが、生活習慣が深く関係しています。ご自身の生活を振り返り、思い当たる節があれば改善しましょう!
- 適正体重を維持する
肥満の方はプリン体を合成しやすく、尿酸の排泄機能が低下して、尿酸値が高くなる傾向にあります。BMI [体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)]が25以上の肥満の方は、食事を見直し、適度な運動を心がけましょう。
- 3食栄養バランスがとれた食事を心がける
脂肪や糖分を摂りすぎてカロリーオーバーになっていませんか。欠食や乱れた食習慣も見直してください。3食栄養バランスがとれていないと、プリン体を多く摂ってしまうことにつながります。栄養バランスがとれた食事は適正体重の維持にもつながります。
- プリン体の多いものは控える
プリン体含有量の多い食品(下表参照)を頻繁に食べていると、尿酸値が上がりやすくなります。すると、尿が酸性に傾き、尿酸を排泄しづらくなります。尿酸をアルカリ性に傾かせるには、野菜やきのこ、海藻を意識して摂るようにしましょう。
『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン』(第3版)では、プリン体の1日の摂取量は400mg程度が推奨されています。
【食品中のプリン体含有量(100gあたり)】
極めて多い(300mg~) | 鶏レバー、干物(マイワイシ)、白子(イサキ、ふぐ、たら)、あんこう(肝酒蒸し)、太刀魚、健康食品、(DNA/RNA、ビール酵母、クロレラ、スピルリナ、ローヤルゼリー) など |
多い(200g~300g) | 豚レバー、牛レバー、カツオ、マイワシ、大正エビ、オキアミ、干物(マアジ、サンマ) など |
中程度(100g~200g) | 肉(豚・牛・鶏)類の多くの部位や魚類など、ほうれん草(芽)、ブロッコリースプラウト など |
少ない(50g~100g) | 肉類の一部(豚・牛・羊)、魚類の一部、加工肉類など、ほうれん草(葉)、カリフラワー など |
極めて少ない(0g~50g) | 野菜類全般、米などの穀類、卵(鶏、うずら)、乳製品、豆類、きのこ類、豆腐、加工食品 など |
- アルコールの飲みすぎに注意
アルコールは尿酸の産生量を増やしてしまい、排泄を阻害する働きがあります。また、利尿作用があるため、体の中の水分量が減少して、尿酸値が上がりやすくなってしまいます。最近は、プリン体ゼロや低プリン体のアルコール商品がありますが、アルコールはプリン体の有無にかかわらず、尿酸値を上げる働きがあるということを忘れずに!
- 適度な運動
運動をすることで肥満改善につながり、尿酸値を下げることが期待できます。ただし、筋トレのような激しい無酸素運動は、尿酸値を上げてしまう可能性があります。ウォーキングなどの軽い有酸素運動を定期的に行うことをおすすめします。
運動で多くの汗をかき、そのままの状態にしておくと脱水状態になり、尿酸値を上げる原因になります。こまめに水分補給をしましょう。
- ストレスには注意
過度のストレスや脳を酷使することは尿酸値を上げる原因といわれています。ストレス解消には、
・しっかり寝ること
・適度な運動で気分転換
・美術館で感性に刺激を受ける
・旅行に行くなどでリフレッシュする
・好きな音楽を聴く
・ハーブティーでリラックスする
・趣味に没頭する
などなど、ご自身に合ったストレス解消法を見つけ、ストレスを溜め込まないようにしましょう。
- しっかり水分を摂る
尿酸は尿から排泄されます。水分を多く摂って尿酸の排泄を助けます。アルコールやジュースではなく、水またはお茶などの無糖の飲み物をこまめに摂ることで尿路結石の予防にもなります。
「プリン体」は、私たちの生命活動に必要な役割を果たしています。一定量は必要ですが、摂りすぎると悪い影響を及ぼすことが理解できたのではないでしょうか? 日ごろの生活を見直し、摂りすぎには気をつけましょう。
【参考文献等】
・e-ヘルスネット「プリン体」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-032.html
・高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(第3版)
https://minds.jcqhc.or.jp/common/summary/pdf/c00476_supplementary.pdf
ライター:山下 真澄
管理栄養士|日本スポーツ協会公認スポーツ栄養士|
食育インストラクター|一級惣菜管理士|調理師