“ひとくち30回以上かむ事”が良いとされています。みなさんいかがでしょうか?
ゆっくりよくかんで食べる事には、沢山メリットがあります。
近年の疫学調査により、速食い習慣がある人は肥満者が多いことがわかってきました。「ゆっくりよくかむ事」は肥満対策のひとつとして期待されています。その一方で、歯を失うと「かめない」状態になり、栄養摂取バランスの低下をきたします。食べ物をよく「かむ事」「かめる事」は健康と密接なつながりを持っています。
ゆっくりよくかむ事のメリット
食べ過ぎ防止
食事が少量でも、満腹のサインが脳に伝わりやすく食欲が抑えられ、食べ過ぎを防ぎます。さらに脳内物質の働きにより内臓脂肪の分解を促進することも知られています。
味覚が発達する
食べ物本来の味を認識することができ、味覚がよく発達します。
顎の発育に
顎の筋肉が鍛えられて歯が並ぶための顎の骨を発達させ、歯並びを良くします。
脳の活性化
脳神経が刺激され脳に流れる血液の量が増えて脳が活性化し、記憶力の向上や認知症の防止にも効果的とされています。
虫歯や歯周病や口臭を予防
唾液の分泌がより促され、口の中を洗い流したり細菌の繁殖を抑えたりする唾液の働きにより、虫歯や歯周病や口臭を予防します。
胃腸の働きを助ける
唾液の分泌が更に増え、口の中で食べ物をより分解することで、消化・吸収の役割をする胃腸の負担を軽減します。
よくかんで食べる習慣がオーラルフレイル対策に
滑舌が悪くなる、固いものがかみづらい、食べこぼしたりむせることが増えたetc…高齢になるとよく見られる現象、年のせいだと、些細な口の機能の衰えを当たり前のように思われる方も多いと思いますが、この現象は近年「オーラルフレイル」と呼ばれ、注目されています。
健康と要介護の間には、筋力や心身の活力が低下する「フレイル」と呼ばれる段階があり、その手前でオーラルフレイル(些細な口の機能の衰え)の症状は現れます。オーラルフレイルは、早期の重要な老化のサインとされています。
かむ力が弱くなると摂取する食品のバリエーションが減り、食事のバランスが偏りやすくなります。食事の楽しみも減り、食欲の低下につながるなど、低栄養のリスクが高まります。慢性的な低栄養はフレイルの原因となるため、オーラルフレイルはフレイルを加速させる因子のひとつと言われています。
フレイルから続く要介護状態に陥ることなく、健やかで自立した暮らしを長く保つためには、オーラルフレイルに早く気づき、予防や改善に努力することが重要です。
歯ごたえのあるものを積極的に取り入れるなど、食事を通してかむ力を鍛えることもオーラルフレイルの予防につながります。
80歳になっても自分の歯を20本以上保とう
1989年に厚生労働省と日本歯科医師会が提唱した「8020運動」(ハチ マル ニ マル運動)があります。これは「80歳になっても自分の歯を20本以上保とう」という運動です。20本以上の歯があれば、食生活にほぼ満足することができると言われており、この運動には「生涯、自分の歯で食べる楽しみを味わえるように」との想いが込められています。
2019年の国民健康・栄養調査では、「何でもかんで食べることができる人」の割合は、70歳代では約2/3、80歳以上では約1/2しかいませんでした。
歯を失い、食べ物をよくかめなくなると、固い食品を避けるようになり、ミネラル・ビタミン・食物繊維などの摂取量が低くなり、栄養摂取バランスの崩れにつながることがわかっています。
自分の歯を長く健康に保つことは、健康的な食生活へとつながっていきます。
よくかめる食事の工夫
食材は大きめに切る
(サラダのきゅうりは乱切りにする、煮物は一口大に切る、など)
歯応えのある食材を使う
(きのこ、ごぼう、ナッツ、こんにゃく、油揚げ、など)
飲み物で流し込まない
(モグモグしている間は飲み物を飲まない、など)
○○しながら食べない
(TV観ながら食べない、など)
よくかもうと意識し取り組む事は、なかなか大変だと思います。
まずは普段の自分がひとくちで何回かんでいるのか、数えてみましょう。そこから+3回、+5回、・・、と少しずつ増やしていき、少しずつ習慣を変えていくと、自然とかむ回数を増やしていけるかもしれません。