食品の値上げが相次いでいます。特に「小麦粉(製粉)」と「食用油」の価格急騰による影響が大きく、なかでも輸入小麦の政府売渡価格が前年比約2割増の水準が続いたことで、小麦粉を主原料とする食品の値上げが相次いで実施されたほか、これらを副原料とする周辺商材にも影響が急速に波及し、価格へ反映させる動きが急増しています。
小麦の85%が輸入の日本
日本の小麦の食料自給率(カロリーベース)は15%、つまり85%は輸入しているのです。それゆえ、天候不順や世界情勢の変化の影響を大きく受けています。
現在の値上げの1番の要因は、主産地であるカナダやアメリカの不作の影響です。
昨年の夏、カナダとアメリカで高温、乾燥が起きたことで小麦は不作となりました。日本はロシアやウクライナから直接は小麦を輸入していませんが、ウクライナ情勢の影響は一部受けています。ウクライナ情勢等による供給懸念に伴う小麦国際相場の高騰の影響です。その他、アメリカ・カナダ・オーストラリアの日本向け産地における品質低下等による高品質小麦の調達価格帯の上昇、為替が円安傾向で推移した影響なども受けています。
食用油の値上げの背景
世界的な油脂の需要の高まりや、産地での天候不順に加え、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻などを背景に大豆や菜種などの原材料価格の高騰が続いていることや、物流コストの上昇、さらに急速に進む円安などが重なり、食用油の値上げが止まりません。また、今年1月にはパーム油が過去最高値を更新しています。元々、主産地東南アジアの天候不順による生産障害、パンデミックによる農場での労働力不足、パンデミックで落ち込んでいた需要回復などの影響で、パーム油は昨年に過去最高値を更新していましたが、今年1月にはインドネシアが輸出規制を発表したことで、更に急騰しています。
こんな状況こそ、和食を食べよう!
現代の日本人の食事バランスをみても、油脂を取り過ぎている傾向にあります。2019年の国民健康・栄養調査の結果では、脂肪エネルギー比率が30%を超えている人の割合は、20歳以上男性では約35.0%、20歳以上女性では約44%という結果が示されています。また、近年の年次推移でみると、男女ともに脂肪エネルギー比率が30%以上の人の割合がだんだん増えてきています。
食料品の値上げ問題や食事バランスの見直しからみても、まさに今、和食を食べる機会を増やすことをオススメします。和食は、米を主食とした食事が基本です。米の自給率はほぼ100%で、米の消費は日本の農家の支援に繋がります。理想的な食事バランスといわれた1980年度の食事は、米を主食とし、魚、野菜、海藻、豆類を基本に肉、牛乳・乳製品、果物なども加わり多様な副食を組み合わせた栄養バランスに優れた食事でした。これは農林水産省が提唱した”日本型食生活”といいます。「主食」と「主菜」「副菜」を揃え一汁三菜を意識すると、栄養バランスが整いやすくなります。現代は食の欧米化が進み、肉類や油脂類の消費が大幅に増加した食生活になり、脂質の摂取が増えました。
食料自給率は2020年度は過去最低水準の37%。自国で食べる物をまかなえる力があるとはいえない現状です。食品の値上げ問題から、自給率を上げることの必要性を考えてみてはいかがでしょうか。
参考:帝国データバンク
農林水産省「食料自給率」(2020年)
厚生労働省「国民健康・栄養調査」(2019年)
農林水産省「日本型食生活のすすめ」