FIFAワールドカップ・カタール2022で世界は盛り上がっていますね。サッカーのように90分間しっかりプレーして走り切るためには、持久力も筋力も必要です。今回は持久力を高めるための食事について、お話していきますね。
運動に必要なエネルギー源は2つ
運動に必要なエネルギー源は2つあります。筋肉や肝臓に蓄えられているグリコーゲン、もう1つは皮下脂肪などに蓄えられている脂肪です。グリコーゲンは、食事から取った糖質(ごはんや麺、パン類などの主食)が消化、吸収され再合成されたものです。筋肉に蓄えられるグリコーゲンを「筋グリコーゲン」と言い、筋肉を動かすエネルギー源となります。他にも肝臓に蓄えられる「肝グリコーゲン」もあり、主に脳を動かすエネルギー源となります。運動強度が高いと、脂肪もエネルギー源として使用されますが、主にグリコーゲンがエネルギーとして使われます。運動前から筋グリコーゲンの貯蔵量を満タンにしておくことで、運動することを維持できます。そして、肝グリコーゲンもしっかり蓄えられていることで、集中力の持続につながります。そのため、持久力を高めるためには、グリコーゲンの材料である糖質を練習や試合前からしっかり取ることがポイントとなります。もし、体脂肪が気になる、太るなどの理由から糖質や脂肪を制限する、摂取不足により糖質が不足すると、疲労困憊状態になり集中力が低下して思考能力も落ちてしまいます。これでは運動を続けることは難しいですね。
グリコーゲンを蓄える量は限られている
グリコーゲンの貯蔵量は限られています。筋肉は約250g、肝臓は約100g程度と少ないため、持久力を維持するには毎食、糖質を多く含む食事を取る必要があります。また、トレーニングや試合後は消耗したグリコーゲンを食事で回復させ、また、貯蔵量を満タンにして次の試合やトレーニングに臨みます。糖質は主食であるごはん、麺、パン類だけではなく、芋類や果物、かぼちゃやにんじんなどの野菜などにも含まれています。また、アスリートは3食では補いきれない栄養を「補食」を利用して補います。その際も、糖質を多く含むものを選びます。おにぎりやあんまん、カステラ、団子やもち、バナナなどの果物や果物100%ジュースなどを選ぶことで糖質を取ることができます。糖質を含む食品は色々ありますので、その時に応じて自身で選んでみましょう。
ビタミンB群の摂取も忘れずに
糖質をとる際は、ビタミンB群も忘れないことが大切です。ビタミンB群は糖質や脂質、たんぱく質の分解や合成に関わっています。特に、ビタミンB1は糖質の代謝に必要で、糖質をエネルギーに変えてくれる大事な役割があります。また、疲労回復ビタミンとも言われています。不足すると疲れるなどの支障がでて、持久力の低下にもつながります。しっかりビタミンB群を一緒に取りましょう。多く含む食品についてはFoodLibrary「運動後、疲労を次の日へ持ち越さないためには!」をご覧ください。
貧血にも注意が必要
持久系のスポーツは「貧血」にも注意です!貧血とは全身に酸素が行き渡らずに、酸欠状態になり、身体に様々な症状が起きる状態です。鉄は身体中に酸素を運搬する役割があるため、鉄が不足してしまうと身体中に酸素を運搬することができず、息切れやだるい、疲れやすいなど運動を持続することが難しい状態になっていきます。また、酸素はエネルギーを生み出すために必要です。鉄が不足していると酸素の運搬も不足しエネルギーを生み出せず、持久力低下につながってしまいます。鉄は腸からの吸収率が悪く、不足しがちな栄養素の一つです。そのため、食事で鉄の摂取を心掛け、意識する必要があります。食事では、鉄の多い食品を取ることと、鉄の吸収をよくするたんぱく質やビタミンCを一緒に取ることがポイントです。
鉄の多い 食品 | 豚レバー、鶏レバー、牛肉赤身、かつお、ぶり、あさり、大豆製品、小松菜、ほうれん草 など |
持久力を高めるための基本的な食生活は、1日3食欠かさず食事をして、主食と主菜と副菜が揃ったバランスのよい食事を取ります。そこにプラスして意識して取る栄養素は、糖質です。また、糖質の代謝に必要なビタミンB1、貧血予防に鉄やビタミンC、たんぱく質も必要です。持久力を高めたい時には、日頃からこのような栄養素を意識した食事をしてみてください。
ライター:山下 真澄
管理栄養士|日本スポーツ協会公認スポーツ栄養士|
食育インストラクター|一級惣菜管理士|調理師