前回、脂肪の役割や体脂肪についてお話ししました。今回は、健康な体づくりのため、体脂肪の適正量を把握し、維持することの重要性と、そのための食事のポイントについてお伝えします。
あなたの今の体脂肪率は?
毎日、忙しすぎて、体重計にのることすら億劫になっていませんか? 鏡に映る姿にはさほど変化がないから「大丈夫!」と油断してしまい、健康診断などの機会に体重計にのって慌てる人も多いのではないでしょうか? 見た目ではなく、ご自身の体について正しく知ることこそが健康な体をつくる第一歩です! そのための指標として「体脂肪率」や「BMI」があります。
【体脂肪率】
体脂肪率とは、体重に占める体脂肪の割合のこと。体重が同じでも体脂肪が多い人・少ない人がいます。体重だけでは体脂肪が多いか少ないかの判断は難しいのです。
体脂肪率と生活習慣病などの健康障害の間には明確な相関は認められていません。それは、体脂肪率は内臓脂肪だけでなく皮下脂肪も含んでいるからです。そうは言っても、体重や体脂肪が多いことは健康を阻害する一因となります。したがって、体脂肪率の把握が重要なのです。
体脂肪量を知るにはいくつか測定方法がありますが、ご家庭では体脂肪計や体組成計を使うと簡単です。脂肪は電気を通しにくく、筋肉は電気を通しやすいことを利用した「生体インピーダンス法」を用いて、体に微弱な電流を流し、インピーダンス(電気抵抗値)と体重、身長、年齢、性別などから体脂肪率を推定します。測定時間や水分量に影響されるので正確な数値を出すことは難しいのですが、毎日決まった条件で測定することで、一つの目安にはなります。
体脂肪率は、下記の式で求められます。
体脂肪率(%)=体脂肪量(kg)÷体重(kg)×100 成人男性は25%、成人女性は30%を超えると体脂肪量が過剰とされます。
【BMI】
肥満度を表す指標としてBMI(Body Mass Index)があります。肥満や低体重の判定に用いられ、国際的な体格指数として認められています。算出方法は、体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)です。
BMIが正常値でも体脂肪率が高い「隠れ肥満」の可能性もあるので、体脂肪率とBMI両方のチェックが欠かせません。特定健診・特定保健指導の対象者の選別基準としてBMIが採用されているのは、メタボリックシンドローム予備群を拾いあげられる可能性があるからです。 また、フレイル予防においてもBMIが参考にされています。フレイルとは加齢とともに体や心の働き、社会的なつながりが弱くなり、健康障害を起こしやすい状態のことです。高齢期になると活動量や食事量の低下などから体重減少が見られますが、やせ過ぎのほうが肥満より死亡率が高いという研究結果があります。
(図1)目標とするBMIの範囲(18歳以上)
年齢(歳) | 目標とするBMI |
18〜49 | 18.5〜24.9 |
50〜64 | 20.0〜24.9 |
65〜74 | 21.5〜24.9 |
75以上 | 21.5〜24.9 |
(図1)の「目標とするBMI」の数値は最も病気になりにくい状態といわれており、25を超えると糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病のリスクが高まります。定期的に体重測定を行い、BMI値のチェックを心がけてください!
体脂肪を減らす食事のポイント
体脂肪を減らすためには、日ごろの食事や運動を見直すことが何よりも重要です。そのためのポイントを下記に挙げます。
①摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスを考えましょう
摂取エネルギーが消費エネルギーを上回ると、使いきれなかった分は体脂肪として体に蓄えられ、体重増加に繋がります。したがって、揚げ物のような脂質の多い食事に偏ることなく、煮る・焼く・蒸すといった調理方法を工夫することが大切です。
甘いジュースやお菓子などの間食もカロリーが高いので要注意ですが、間食には気分転換になるなど好ましい側面もあるのでまったくNGというわけではありません。ただし、200kcal以内に抑えるようにしていただきたいと思います。食べる時間帯もポイントです。夜は日中よりエネルギー消費量が少なくなります。食べるなら活動量の多い朝や昼などにしましょう。
②アルコールはほどほどにしましょう
暑くなると、よく冷えたのど越しのよいアルコール飲料は、暑さを吹き飛ばし、仕事の疲れも癒やしてくれます。しかし、アルコールのカロリーは、1gあたり7.1kcalと高めで、合わせるつまみも高カロリーのものを選びがちです。アルコールは肝臓で代謝されますが、その代謝と一緒に中性脂肪の合成が進み、必要以上に中性脂肪がつくられてしまいます。つまみのカロリーも、体脂肪増加につながります。飲酒は、節度ある量にとどめ、つまみは野菜や豆腐などカロリーの低いものを選ぶようにしましょう。
③よく嚙んで食べましょう
よく嚙んで食べると満腹中枢が刺激されて、食べすぎを抑えてくれます。また、よく嚙むことで出てくる唾液には消化酵素「アミラーゼ」が含まれ、食べたものが効率よく消化されるので内臓への負担を軽減してくれます。
④食物繊維を意識してとりましょう
食物繊維は便通を改善し、血糖値やコレステロールの上昇を抑えてくれます。海藻やきのこ、野菜などを意識して食べましょう。食べる順番も、ベジタブルファーストにすると、胃の中のかさ増しになって食べる量を抑えることにつながるばかりでなく、急激な血糖値の上昇を防いでもくれます。急激な血糖値の上昇は、脂肪を蓄えてしまう原因の一つ。血糖値を緩やかに上げることは肥満対策としても大切です。
⑤たんぱく質を毎食とりましょう
たんぱく質は筋肉の材料ですが、ごくわずかしか体内に貯めておくことができないため、毎食とらないと筋肉量の低下につながります。すると、代謝の低下を招き、脂肪が燃焼されにくい体になります。肉や魚、大豆製品、乳製品は、ぜひとも毎食摂取するように心がけてください。「日本人の食事摂取基準(2020版)」では、1日に摂取するたんぱく質の推奨量は、18〜64歳男性で64g、65歳以上の男性で60g、18歳以上の女性で50gとされています。片手のひらにのる程度の肉や魚が目安です。
ライター:山下 真澄
管理栄養士|日本スポーツ協会公認スポーツ栄養士|
食育インストラクター|一級惣菜管理士|調理師
【出典】
e-ヘルスネット「体脂肪計」
e-ヘルスネット「BMI」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-002.html
日本人の食事摂取基準(2020年版)