運動時や暑くなって発汗量が増えると、いつも以上に水分が欲しくなります。水分補給の大切さはわかっていても、どうして必要なのか、どのくらい飲めばいいのか、どんな種類の水分をとればいいのか? 今回は水分補給の大切さやとり方のポイントについてお伝えします。
水分は体内で大切な役割がある!
水分は、人間の体の成分の約60%を占めています。ただし、子どものころはそれより多く70~75%、高齢になると筋肉量の低下によって40〜50%程度と少なくなります。
体内での水分の役割は、体温を保持する・栄養素を運搬する・体のミネラルのバランスを調整する・栄養素を吸収しやすいように分解し、代謝できるように溶解するなど、非常に重要です。
例えば、体温を保持する機能として、「汗をかく」ことがあります。汗をかくと気化熱の働きによって皮膚の表面が冷え、それに伴って皮膚の下を流れる血液も冷えます。冷えた血液が全身を巡るため、体温が下がるという仕組みです。このようにして体温をコントロールしています。
水分が足りないとどんな障害が起こる?
体内から水分が体重あたり5%失われると、喉の渇きを覚え、吐き気、めまい、頭痛、倦怠感などの脱水症状や熱中症の症状があらわれます。10%失われると、筋肉の痙攣、循環不全が起こります。20%失われると、生命の危機に瀕します。
このように、水分は生命維持に必要不可欠なことがおわかりいただけたと思いますが、水分不足で起こる代表的な障害として挙げられるのが「脱水症」と「熱中症」です。
「脱水症」は、体内の水分量が不足した状態のことですが、血液中の水分も減少するため、血液がドロドロになって血栓ができ、血管が詰まりやすくなり、脳梗塞や心筋梗塞を起こしやすくなります。
「熱中症」は、高温多湿の環境に長時間いることで体温保持機能が低下し、体内に熱がこもり、その結果、体内の水分や塩分などのバランスが崩れることです。最初は大量の発汗やめまい、筋肉の痛みなどが起こりますが、ひどくなると、倦怠感や吐き気、頭痛などの症状となり、痙攣や意識障害を招き、昏睡状態に。
少しでも気になることがあったら我慢せずに、涼しい場所で休み、塩分を含んだ水分補給をするなどの応急処置をすることが大切です!
1日に約2.5Lの水分が必要です!
体内の水分量は、摂取量と排泄量で常に一定に保たれています。このバランスが崩れると、体調不良を起こします。
運動時や暑いときはたくさん汗をかきますが、汗をかいた分、水分を補給しないと、水分量を一定に保つことができず、脱水状態となってしまいます。特に重労働やスポーツなどで発汗量が多い人は、摂取量を増やす必要があります。日ごろから意識して水分をとりましょう!
ただし、多くとればとるほどいいわけではありません。
人間が生きていくために必要な水分量は2.5Lといわれています。
人は食べ物から1.0L、体内で作られる代謝水から0.3L摂取できるので、あとは飲み物から1.2L摂取すればいいことになります。
【POINT】
・たくさん水を飲みすぎないようにしましょう
大量に水を飲むことや一度にたくさんの水を飲むことで、電解質のバランスが崩れてしまい、低ナトリウム血症を起こします。むくみ、頭痛、疲労感などの症状が起き、尿量も増え、腎臓にも負担をかけます。重度になると、呼吸困難や意識障害を起こします。何事もほどほどに…
・こまめに水分補給しましょう
一度に大量に水分をとっても尿として排泄され、上記のような障害も出やすくなります。1日に7〜8回ぐらいに分けてこまめに補給するといいでしょう。特に、起床時や就寝時・入浴の前後・運動前後は、水分が失われやすいので意識して補給してください。
・喉が渇く前に水分補給をしましょう
「喉が渇いた!」というタイミングでは、すでに脱水が進んでいると思ってください。喉の渇きを覚える前に水分補給を!
トイレに行く回数が少ない、尿の色が濃い、といった場合は水分不足のサイン! 特に高齢になると、喉の渇きを感じにくくなるので、気をつけましょう。
・3食、しっかり食べましょう
意外に思われるかもしれませんが、私たちは飲み物だけではなく、食べ物からも水分をとっています。したがって、食事の欠食は脱水症や熱中症の要因になります。とりわけ夏場には、朝食を欠食して外出をしたり、水分もとらずに過ごしたりしていると、脱水症状を起こしかねません。そして、それが引き金になって熱中症に……。欠食は要注意です!
・汗をかいたときは塩分も補給しましょう
夜、寝ている間も汗をかき、起きてから水分をとらないでいると体の水分がカラカラ状態です。
日常生活で汗をかく程度なら、水や麦茶、お茶などで水分補給をしていただければ大丈夫ですが、運動などで大量に汗をかくときは、水分だけではなく、塩分も一緒にとる必要があります。
汗には水分だけではなく、塩分やカルシウム、カリウム、鉄なども含まれているので、発汗で失ったミネラルも補給しなければなりません。
100ml当たり0.1〜0.2%の塩分を含んだ飲料またはスポーツドリンクをとるようにしましょう。1時間以上運動する場合はエネルギー補給の観点から糖分を4〜8%含んだものがよいでしょう。汗で失った成分を効率よく補給することができます。
1Lの水に、塩2〜3g、砂糖40g、レモン汁少量を加えると、簡単に塩分と糖分がとれるドリンクを作ることができます。麦茶でもOKです。
昔は運動する場面で、水分補給するとパフォーマンスが下がるという迷信があり、水分補給をせずに運動をしていたこともありましたが、実はその逆で、水分補給しないとパフォーマンスの低下を招きます。
・お酒は水分補給になりません!
運動の後や汗をかいた後などの1杯のビールは格別ですが、お酒には利尿作用があるので、脱水が進んでしまいます。飲み過ぎ注意です!
ライター:山下 真澄
管理栄養士|日本スポーツ協会公認スポーツ栄養士|
食育インストラクター|一級惣菜管理士|調理師
【出典】
・厚生労働省HP「健康のために水を飲もう」推進運動
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics/bukyoku/kenkou/suido/nomou
・日本スポーツ協会「熱中症予防運動指針」
https://www.japan-sports.or.jp/Portals/0/data/supoken/doc/heatstroke/heatstroke_0531.pdf