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生活を見直し、生活習慣病を予防しましょう!②
2023.11.07 おすすめ記事

生活を見直し、生活習慣病を予防しましょう!②

前回は生活習慣病の概念や、生活習慣病の一つである高血圧についてお話ししました。今回は、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症についてお話しします。

糖尿病

糖尿病とは、膵臓から出るインスリンというホルモンが十分に働かないため、血液中のブドウ糖という糖(血糖)が増えてしまう病気です。インスリンは、血糖を一定の範囲におさめる働きを担っています。血糖の濃度(血糖値)が高い高血糖状態をそのままにしておくと、血管が傷つき、腎不全、壊疽(えそ)、網膜症など重篤な病気を合併します。糖尿病で恐ろしいのは、こうした合併症です。

 糖尿病には1型糖尿病と2型糖尿病があり、1型は自己免疫疾患などが原因で発症し、2型は運動不足や過食、肥満など生活習慣が原因で発症します。

 糖尿病は過去1〜2カ月の血糖値のコントロール状態を評価したHb A1cや、空腹時や食後の血糖値などで診断します。日本糖尿病学会では、糖尿病を疑う基準として、早朝空腹時血糖値126mg/d L以上、Hb A1c6.5%以上などの数値を定めています。

 初期症状はほとんどありませんが、高血糖状態が続くと、「喉が渇く」「疲れやすい」「尿の回数が多い」「体重減少」などの症状があらわれ、重篤になると「意識障害」に至ることもあります。定期的に健康診断を受けて、糖尿病に関わる数値を確認しましょう。早期発見、早期治療をすることで合併症を防ぐことができます。

 糖尿病を予防するには「食事」「運動」が大切です。

食事面では、

・主食、主菜、副菜が揃う、バランスのとれた食事

・3食規則正しく食べる

・適正なエネルギー量と適正な体重管理

・ゆっくり、よく噛んで食べる

・なるべく、夜遅くや寝る前に食べない

・糖分や油の多いもの、アルコールの量には気をつける   

などが予防のポイントです。

 運動面では、運動をすることで、血液中の糖を消費して血糖値を下げ、肥満を予防します。また、筋肉をつけることでインスリンの働きを高めることができます。筋肉は食後の糖の8割を貯蔵していますが、筋肉量が減少すると、筋肉に貯蔵できる糖の量が少なくなるため、貯蔵できなかった余分な糖は脂肪に変わります。つまり、筋肉量の減少は内臓脂肪の増加や糖尿病の発症リスクを増加させてしまうのです。そのため運動することは大切なポイントです! 筋力トレーニングをして筋肉をつけ、有酸素運動で脂肪を燃焼させる、この両方を取り入れるとよいでしょう。

脂質異常症

脂質異常症とは、かつての「高脂血症」のことです。2007年に名称が改められました。中性脂肪やコレステロールなどの脂質代謝に異常をきたした状態です。そのままにしておくと、動脈硬化を起こし、脳梗塞や心筋梗塞を招く恐れがあります。

コレステロールは細胞膜やホルモンのもとになり、中性脂肪は体に蓄えられてエネルギーとして使われる大切な役割を持っていますが、必要以上に多くなると体に悪い影響を及ぼします。

原因として、過食、肥満、運動不足、喫煙、アルコール、ストレスなどの生活習慣が大きく関係しているといわれています。

日本動脈硬化学会では、下記のように診断基準を定めています。

【脂質異常症診断基準】

一般社団法人 日本動脈硬化学会『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版』をもとに作成

糖尿病同様、初期症状はほとんどありません。脂質代謝に異常をきたした状態が続くと、動脈硬化が進みやすくなります。血管壁に余分な脂質でつくられる「プラーク」ができ、徐々に血管壁が厚くなり、血液の流れが悪くなります。その結果、心臓や脳に重篤な疾患を招くことになります。

予防方法としては、糖尿病同様、食事と運動について意識して取り組むことが大切です。脂質の多い食品を摂り過ぎないようにし、食物繊維を積極的に摂取すること。そして、適度な運動でエネルギーを消費させることを心がけ、余分なエネルギーを脂肪に変えて体に蓄えないようにしましょう。

高尿酸血症

高尿酸血症とは血液中の尿酸の値が高い状態のこと。尿酸は、プリン体という物質が体内で分解されて生じる老廃物です。血液中の尿酸が7.0mg/dLを超えると、高尿酸血症と診断されます。

原因は、生活習慣の乱れやアルコールです。症状はあまりなく、進行していくと、関節や足先や耳たぶなどに結晶となった尿酸が溜まり、炎症を起こし、激痛の痛風発作が起こります。患者さんは圧倒的に男性に多く、女性は女性ホルモンの影響により尿酸値がコントロールされるため、比較的少ないのですが、閉経後はやや増加します。

尿酸値が高くても痛風発作が起きていないからといって安心し、発作が起きてから改善に努める方が多いのですが、痛風発作は「風が吹いても痛い」といわれるほど激痛です。激痛が起きてから後悔するのではなく、日ごろから予防しましょう。

予防方法としては、適正量のバランスのよい食事とアルコール量を見直すことです。原因となるプリン体の多い食品(ビール、卵、魚卵など)を食べる機会が多い方は控えましょう。「ビール以外のものを飲んでいるから大丈夫!」という方がいらっしゃいますが、アルコール自体に尿酸を増やしてしまう働きがあるため、どんなアルコールも飲み過ぎには要注意。そして、水分や野菜は多く摂ることがポイントです。運動も有効です。ただし、有酸素運動はよいのですが、過度の激しい運動は尿酸がつくられやすくなり、尿酸値を上げることにつながります。何事もほどほどに!

今回は、3つの生活習慣病を挙げました。どれも予防には日ごろの食事、運動が大切となります。生活習慣病予防だけではなく、健康な体づくりのためにも今一度、食事、運動を見直してみましょう!

【参考文献・資料】

・e-ヘルスネット「糖尿病」

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-048.html

・国立国際医療研究センター  糖尿病情報センター

https://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/010/010/01.html

・日本糖尿病学会 糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告

 「糖尿病」 2012年55巻7号 p.485-504

https://www.jstage.jst.go.jp/article/tonyobyo/55/7/55_485/_article/-char/ja/

・e-ヘルスネット「脂質異常症」

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-029.html

・一般社団法人 日本動脈硬化学会『動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版』

https://www.j-athero.org/jp/wp-content/uploads/publications/pdf/GL2022_s/jas_gl2022_220713.pdf

・e-ヘルスネット「高尿酸血症」

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-05-007.html

ライター:山下 真澄

管理栄養士|日本スポーツ協会公認スポーツ栄養士|
食育インストラクター|一級惣菜管理士|調理師