冬は寒くて室内にいることが多くなり、日照時間が短くなるため、日光にあたる時間が少なくなります。日光にあたる時間が少なくなると、ビタミンD不足を招いてしまいます。ビタミンDの不足は骨が弱くなるなど、体に悪影響を及ぼします。
ビタミンDの働き
ビタミンDは骨の健康維持に重要で、腸管からカルシウムの吸収を助けてくれる大切な役割があります。ほかに、免疫機能を調整したり、筋肉の収縮、神経伝達を正しく行う働きもあり、多岐にわたって活躍する大切な栄養素の一つです。
ビタミンDは日光にあたることで生成される
ビタミンDは珍しいビタミンで、食品から摂る以外に、日光にあたることで生成されます。日光の紫外線を浴びることで、皮膚の中にあるプロビタミンD3(7-デヒドロコレステロール、プロカルシフェロール)をもとにビタミンDが生成されます。ビタミンDは食品から必要量を摂るのが大変なので、日光にあたることで生成しないと不足しやすくなります。
冬はビタミンDが不足しやすい
冬の日照時間の短さと、寒くて家の中にこもりがちになると日光にあたる機会が少なくなります。長袖を着ていることでも、日光にあたる面積が少なくなります。当然、紫外線を浴びることが少なくなるため、ビタミンDの生成がうまくできず、不足しやすくなるのです。
ビタミンDが不足すると…
ビタミンDが不足すると、低カルシウム血症を起こし、骨の軟化を招きます。特に小児の場合は、骨の成長障害になりやすくなります。高齢者の場合は、骨粗鬆症で骨折を起こし、寝たきりになるリスクが高くなります。筋肉や免疫にも関係しているため、冬の時期は、風邪などの予防のためにもビタミンDを意識して摂取する必要があります。
ビタミンD不足を招かない工夫
ビタミンD不足を招かないためには、やはり、ビタミンDを多く含む食品を摂ることと、日光にあたること。では、食品からビタミンDを摂取するには、どのくらい食べればいいのでしょう?
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、ビタミンDの1日の摂取目安量は、18歳以上の男女ともに8.5μg、耐容上限量は100μgと定められています。
ビタミンDを多く含む食品は、魚介類やきのこ、卵、乳製品です。例えば、
紅鮭1切れ(約80g):33.0μg
サンマ1尾(正味100g):16.0μg
まいたけ1パック(100g):4.9μg
鶏卵(全卵Mサイズ殻付き)1個60g:3.8μg
などなど。魚を食べていればクリアできそうですが、意識してビタミンDを多く含む食品を摂るようにしないと、なかなか大変そうなことがわかります。
調理のポイントとしては、ビタミンDは脂溶性ビタミンなので油との相性がいいので、炒め物や揚げ物などによる損失が少なく、吸収率を上げることができます。
もう一つの日光にあたるほうですが、目安時間は、地域や季節、天気、時間帯によって異なります。ビタミンDを生成するために必要な目安時間は15〜30分とされています。冬ならば気温が高い時間帯の散歩や買い物などで、外に出る機会をつくれるといいでしょう。顔(日焼け止めクリームを塗っていないほうが望ましい)や両手の甲が露出しているだけでも十分です。
日光にあたることで、さらに体内時計のリセット、リラックス効果、ストレス解消になるといった効果も期待できます。屋内にばかりいることが多い人は、まずは天気のいい日にリフレッシュを兼ねて一歩外に出ることから始めてみてはいかがでしょう。
【参考文献等】
・国立研究開発法人 国立環境研究所
体内で必要とするビタミンD生成に要する日照時間の推定
https://www.nies.go.jp/whatsnew/2013/20130830/20130830.html
・厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
ライター:山下 真澄
管理栄養士|日本スポーツ協会公認スポーツ栄養士|
食育インストラクター|一級惣菜管理士|調理師