水分の補給が大切なのは、汗をかく時期だけとは限りません。寒い時期でも水分が不足する可能性を秘めています。もしかすると、知らないうちに水分不足が進行しているかもしれません。水分が不足すると、体の機能が低下し、頭痛、めまい、倦怠感などを招き、体にダメージを与えます。今回は冬の水分不足についてお伝えします。
なぜ、冬に水分不足?
冬は気温が低く、あまり汗もかかないので、水分不足にはならないと思われがちです。たしかに汗ばむことも、のどの渇きを覚えることも少なくなるため、水分を摂る機会が、夏に比べてぐんと減ります。ところが、冬は空気が乾燥し、暖房を使用している室内は湿度が低く、皮膚表面や呼気から水分が失われています。湿度が低下すると、ウイルスが活発化し、風邪を引きやすくなります。風邪で高熱が出たり、下痢をしたりすると、体内の水分が奪われてしまいます。
水分不足のサイン
私たちの体の約60%は水分でできていますが、その20%を失うと死に至ります。そのため、乳幼児や高齢者のように必要な水分量が違うのに水分不足を感じにくい場合は、注意が必要です。冬は特に、水分不足のサインを感じにくくなるので十分に気をつけましょう。
どの程度、水分を失うと、どんな症状があらわれるか、下記に目安を挙げておきます。
1% | のどの渇き |
2% | めまい、吐き気、ぼんやりする、食欲減退、尿量減少 |
3% | 汗が出なくなる |
4% | 動きの鈍り、皮膚の紅潮化、イライラする、疲労および嗜眠、強い吐き気 |
6% | 手足のふるえ、ふらつき、頭痛、脈拍の上昇 |
8% | 幻覚、チアノーゼ、言語不明瞭、精神錯乱 |
10~12% | 筋痙攣、失神、不眠、腎機能不全 |
15~17% | 皮膚がしなびてくる、嚥下困難、排尿痛、舌がしびれる |
18% | 皮膚のひび割れ、尿生成の停止 |
20% | 生命の危機、死亡 |
実にさまざまな症状が起こることがみてとれます。
手っ取り早く実感できる水分不足のサインとして、次のような症状があったら、できるだけ早く水分を補給し、体を休ませてください。
・のどの渇き
・尿の色が濃い
・疲労感や倦怠感
・めまいやふらつき など
水分不足を予防するには…
水分不足を予防するには、夏に意識して実践しているのと同じで、こまめな水分補給です。夏と違うのは、汗をあまりかかないため、意識しにくいことです。
- こまめな水分補給を心がける
冬は外気も暖房環境下にある室内も乾燥していてカラカラです。体から水分がどんどん奪われてしまうので、のどの渇きを覚える前にこまめな水分補給を心がける必要があります。入浴の前後、就寝前にも忘れずに! ただし、甘い飲み物での水分補給は、糖分を多く摂ってしまい体重増加につながるので避けたいところです。また、お酒には利尿作用があるので、水分補給という意味では逆効果。温かいスープなどの飲み物なら、体も心も温まる効果があるのでおすすめです。
- 湿度も意識する
室内は暖房で暖かく快適でも、そのせいで乾燥して湿度が低くなると、のどや気管などの粘膜が乾燥してウイルスが体内に入りやすくなり、感染症にかかるリスクが高くなります。加湿器などを利用して適湿を保ちましょう。
- お肌のケアも忘れずに
乾燥した空気は、皮膚からも水分を奪っていきます。お肌を保湿して水分の蒸発を防ぐと、乾燥からくる痒みを予防します。保湿クリームなどでお肌のケアをしましょう。
汗をかかないからといって、冬も水分補給が大事なことは言うまでもありません。夏同様、こまめに水分を補給して乾燥から体を守るように心がけてください。
【参考文献等】
・環境省 熱中症 環境保健マニュアル2022
・『理論と実践 スポーツ栄養学』(鈴木志保子著、日本文芸社、2018年刊)
ライター:山下 真澄
管理栄養士|日本スポーツ協会公認スポーツ栄養士|
食育インストラクター|一級惣菜管理士|調理師